アスパラガスの原産地は地中海東部とされ、古くからヨーロッパで伝統野菜として消費されていました。日本へは、江戸時代に観賞用として持ち込まれたのがはじめとされています。国内で消費されるようになったのは、昭和40年代以降で、グリーンアスパラガスが主流でした。
現在アスパラガスには、グリーン、ホワイト、パープルなどの種類が販売されています。グリーンとパープルは品種特有の色ですが、ホワイトはグリーンに土をかぶせて育てたものです。パープルの中でも、ゆでると緑色になってしまう品種もあります。
アスパラガスは、全体の色が鮮やかな緑色で、茎の太さが一定でハリがあるまっすぐなものを選びましょう。穂先がピンとしていて穂がびっしりと詰まったものが良いものです。茎の切り口が丸くてみずみずしものが新鮮です。アスパラガスは、鮮度が落ちるのがとても早い野菜です。繊維が目立ち、変色しているものは避けましょう。
県内での栽培は、昭和50年代に水田転作作物として導入されましたが、当時は露地栽培であったため茎枯病や立枯病などで貯蔵根が枯れてしまい産地化には至りませんでした。昭和60年代に入り、上三川町にパイプハウス栽培が導入されたのを契機に、作付面積が増加してきました。JAうつのみやでは、平成18年5月からアスパラガス共同機械選果が開始されています。
また、大田原市を中心とした那須地域でも水田転作作物や堆肥の有効活用という観点から急速に作付けが増え、25haを超える県内一の産地となっています。
アスパラガスはユリ科の永年性作物で、タケノコのように地下茎から毎春多数の若茎が出てきます。1度苗を植えると、10年以上収穫できます。アスパラガスは貯蔵根に蓄えられた養分を使って若茎を出すので、栽培では貯蔵根に栄養を貯めること(=光合成、養水分管理)が重要です。
グリーンアスパラガスには、主にビタミンA、B1、B2、C、Eなどが含まれています。部位別に見ると、穂先にはルチンが多く含まれており、動脈硬化や高血圧の予防に効果があると言われています。アスパラギン酸はアスパラガスから発見されたことにより命名された栄養分として有名です。
アスパラガスは、穂先が柔らかく、根本が堅いので1本をゆでる際には、始めに立ててゆで、その後横にねかせてゆでると全体に均一にゆであげることができます。
栃木県の中央部、宇都宮市に隣接する上三川町、この町はカルロスゴーン社率いる日産自動車の栃木工場があることで有名ですが、地域ブランド「アスパラガス」の生産が盛んな地域でもあります。
当地でアスパラガスの生産が始まったのは昭和の末頃。県の普及所OBの野村氏が「女性でも栽培できる野菜」として生産者に働き掛けたといいます。
当初は3人でのスタートでしたが、徐々に仲間が増えて、現在では上三川町以外の生産者も加えて、50名の方がアスパラガスを栽培しています。
なぜ、アスパラガスが当地で盛んに栽培されているのか? などの疑問についてJAうつのみやアスパラ部会長を務める稲葉長広(いなば ながひろ)さんに伺います。
A.
私は当地でアスパラガスの栽培が始まった頃から作っていますので、約17年ぐらいになるでしょうか。
A.
上三川町周辺はもともとかんぴょうの生産が盛んな地域でした。しかし昭和の終わり頃から、中国産の安価なかんぴょうの輸入が増え、かんぴょう栽培に代わる作物が求められていました。そこにアスパラガスがちょうど合ったのだと思います。
また、行政が補助事業でパイプハウスの助成を行ったり、JAが育苗センターでアスパラの苗を供給する体制を整えたりと、関係機関や団体の支援も大きかったと思います。
A.
アスパラは水をたくさん必要とする植物です。各ハウスにかん水設備を入れて、土の湿り具合をみながら、だいたい1日に朝1回、たっぷりと水を与えます。あとは株の勢いなどをみながら、液肥を与えたりします。このタイミングは長年の経験と勘ですね。
A.
病気に強く美味しいアスパラを作るには、土作りが基本と考えています。
私は毎冬10a(300坪)に豚ふん堆肥を2~3トン入れていますが、牛を飼っている仲間は、自家製の牛ふん堆肥を入れるなど、それぞれで工夫をしています。それから、ハウス周りの雑草を刈ったり、株の休眠時期にあたる冬期に、地上部をバーナーで焼却するなど、病害虫の発生しにくい環境に心掛けています。
(収穫したアスパラガスが傷つかないように、ネットで覆ってあります。ちょっとした工夫ですね。)
A.
株は一度定植したら10年以上植え替えせず、大切に栽培します。
栽培期間 | |
収穫前年 | 2月頃播種(育苗センター) |
6月頃ハウスに苗を定植 | |
収穫時期 | |
収穫1年目 | 早いものは1月中旬頃から収穫 |
1年目の株 | 収穫始めから30日で3~4本茎立ちさせます。 |
2年目の株 | 収穫始めから45日で3~4本茎立ちさせます。 |
3年目の株 | 収穫始めから60日で3~4本茎立ちさせます。 |
茎立ちした後は、10月中旬頃まで出てきた若芽を連続して収穫します。
冬になり地上部が枯れたら、残渣をハウスの外に持ち出し焼却し、地上部はバーナーで焼却します。さらに、堆肥をハウスに入れて土作りを兼ねた養分補給をします。そして翌年春に芽が出るのを待つことになります。
A.
この時期は毎日のかん水と収穫作業、防除作業などです。
収穫作業:朝5時頃から7時頃に行います。涼しい時間帯のほうが、アスパラの品温も低いので、品質を保ちやすいからです。また、夏場は1日に5cm以上伸びるので、夕方に収穫することもあります。
防除作業:夏場はヨトウムシやアザミウマなどの害虫がつきやすいので、月に1~2回の防除作業が必要です。
ヨトウムシに茎を食べられると商品価値がなくなるため、出荷ができなくなってしまします。
秋を迎えて、今年のアスパラガスの収穫が終わりました。
生産者もほっとひと息・・・と言いたいところですが、実は春の収穫に向けて今が一番大切な時期なのです。
青々としていたアスパラガスの葉や茎は、冬に向けて徐々に枯れていきますが、その間地上部の葉や茎にある養分が、地下茎の部分に下がっていきます(これを養分転流といいます)。この養分が、春のアスパラのあまさ(糖度)に変わるのです。生産者はこの養分転流を防げないよう、水やりや施肥を続けていきます。
そんな秋の一日、上三川町の稲葉長広部会長の圃場において、JAうつのみやアスパラ部会の現地検討会が行われました。 現地検討会とは、部会員が圃場に集まって、栽培についての検討や情報交換を行う会です。栽培についての検討や情報交換を行う会です。
この日の講師は、はるばる佐賀県からおいでになった吉村さんです。佐賀はアスパラガスのハウス栽培産地としては大先輩!貴重なお話が伺えるとあって、40人もの部会員が集まりました。吉村さんには、長年の経験で培われたノウハウを惜しげもなく披露していただき、部会員一同大変勉強になりました。
来年のことを言うと鬼が笑う、と言いますが、生産者は来年の春の収穫の準備を着々と進めています。また、消費者の皆さんにおいしくて質のよいアスパラガスをお届けするためにこのような勉強を続けています。
河内地方の春のアスパラガスに、ぜひご期待くださいね。
新年1月のアスパラガスの圃場です。アスパラガスの地上の葉や茎はすっかり枯れてしまいました。前回書いた「養分転流」も充分に済んだようです。春の収穫に向けて、いよいよ圃場の準備に入ります。
まず、枯れたアスパラガスの地上部を全て刈り取ります。稲葉部会長は全身完全装備、マスク2枚がけで臨みます。身長187センチの部会長の姿がすっかり隠れてしまうほど繁っているアスパラガスを刈るのは、思ったより大変な作業です。空気が乾いているため、細かい葉やほこりがビニールハウス中に舞い上がっています。がんばれ、部会長。
刈り取ったアスパラガスを運び出して、ビニールハウスがすっかりきれいになりました。このハウスは長さ60メートル、幅5.4メートル。アスパラガスはおよそ25~30cm間隔で、3列に植え付けられています。1年の収量(春芽+夏芽)は、株数によって異なりますが、10aあたり1.5トンとのことです。
さて、次の作業は、刈り取った部分のバーナー焼却です。焼却には消毒の役割があって、アスパラガス本体や土壌の中の病原菌や害虫の繁殖を防ぎます。また、農産物の大敵である雑草が増えるのを防ぐので、除草剤の使用量を減らしてより環境にやさしいアスパラガスを生産することができるのです。冬の寒い日には、バーナーの火が嬉しい作業では?
…と素人は考えるのですが、部会長は「暖かいを通り越して、熱いです」とのことでした。
アスパラガスの春芽は、焼かれた株の周りを取り囲むようにして出てきます。アスパラガスの場合、一度植え付けた株は10年以上も新しい芽を出し続けます。野菜というより、タケノコのようなイメージで考えていただくといいかもしれません。
では、次回の「畑からの便り アスパラガス編」をお楽しみに。
・鮮やかな緑!色、ツヤも良く食欲をそそります。食感は繊維質の残らない歯切れの良いやわらかさ。さっと茹でてしゃくっと食べれば、豊かな味わいが口いっぱいに広がります。
・疲労回復に効果てきめんと話題のアスパラギン酸は、アスパラガスにたくさん含まれているため、その名前が付きました。ちょっと疲れたな…というとき、食卓の一品に加えてはいかが?
・宇都宮市、鹿沼市、石橋町、上三川町、河内町、南河内町
・ 2月上旬~10月下旬
(4人前)
グリーンアスパラガス | 8本 |
するめいか | 1ぱい |
根生姜 | 20g |
サラダ油 | 少々 |
塩、コショウ、醤油 | 各適宜 |
アスパラガスは根元の方は薄く皮をむき、4~5cm位の長さに切りかた茹でにする。
いかは胴の部分を幅1cm位の輪切りに、足の部分は5cm位の長さに切る。
フライパンに油をいれ、みじん切りにした生姜を炒める。
いかをいれて少し炒めたらアスパラガスを加え、塩・こしょうで味を整え仕上げにしょうゆを少したらす。
(4人前)
アスパラガス | 300g |
もめん豆腐 | 1丁 |
赤いピーマン | 1個 |
青いピーマン | 2個 |
しめじ | 1/2株 |
豚ひき肉 | 100g |
卵 | 3個 |
ごま油 | 大さじ2 |
砂糖 | 大さじ2 |
しょうゆ | 大さじ1 |
みりん | 大さじ2 |
塩 | 小さじ1/3 |
アスパラガス幅1cmに切る。赤いピーマン青いピーマンたて2つに切りへたをとり1cm角に切る。しめじは細かくほぐしておく。
豆腐はふきんに包み水けをしっかり絞る。卵はときほぐす。
アスパラガス、ピーマン、しめじを色よくゆでる。
鍋にごま油を熱し、ひき肉をほぐしながら色の変わるまで中火で炒め、豆腐とアスパラガス、赤青ピーマン、しめじを加えて炒め、全体に油が回ったら調味料を加え1~2分煮る。
とき卵の1/2量を回し入れ、卵がほぼ固るまで炒める。残りの卵も回し入れて少し火を弱め、返しながらふんわりと固るまで火を通す。
●生クリームを入れることにより、アスパラガスの青くささもなく、味がまろやかになります。
●旬のアスパラガスでつくるときれいな緑色に出来上ります。
(4人前)
アスパラガス | 600g |
たまねぎ | 100g |
じゃがいも | 100g |
バター | 60g |
固形スープの素 | 2個 |
牛乳 | 1カップ |
生クリーム | 大さじ1 |
塩 | 少々 |
水 | 5カップ |
3cm長さに切ったアスパラガスを濃い塩水でさっとゆでておく。
ゆでたアスパラガスと水1カップを合わせミキサーにかける。
じゃがいもとたまねぎは、皮をむき薄く切る。
フライパンにバターを溶かし、3.をよく炒める。
固形スープの素を溶かしたスープ4カップと4をミキサーにかける。
鍋で5.を沸騰させ、2と牛乳、塩、生クリームを加え味をととのえる。